
一般の方にお気に入りのパケットカットを見せたときに、微妙な反応をされた経験は誰しもあると思います。
カーディストリーのムーブって、やっていない人からすると大体同じに見えてしまうんですよね。
自分もカーディストリーを始めたての頃は、良いムーブとそうでもないムーブの違いがよくわかってませんでした。
ある程度カーディストリーに触れると、だんだん感覚が研ぎ澄まされてきて、ムーブの良し悪しが分かるようになってきます。
上級者ともなると、ムーブの最初の1秒を見ただけでだいたいのクオリティが読めてしまうんですよね。
カーディストリーを始めたばかりだと
・いいムーブって何?
・ムーブを作る時に何を意識すればいいの?
と言う疑問がありますよね。
そこで今回は、カーディストリーのムーブを評価する3つの指標について解説していきます。
※カーディストリーは芸術的な要素が強いので、好みやスタイルの違いによって完全に良し悪しを比較することはできません。今回はThe54Clubが使用している指標を紹介します。
ムーブの良さを決める3つの軸:タッチ、アイディア、デザイン
まず端的に説明すると、
– タッチ → ムーブのパフォーマンス部分。ムーブ自体の構成とは独立して評価。
– アイディア → ムーブのコンセプト。何を伝えたいか、何を見せたいか。
– デザイン → ムーブの全体的な構成。アイディアをどう調理するか。
現在のカーディストリー環境では「いかに良いムーブを作れるか」に重きが置かれているため、パフォーマンスは1つの指標、ムーブの作りの部分は2つの指標に分けています。
今後、このバランスが変わる可能性もあるため、随時アップデートしていきます。

いや、よくわからないんだけど、、、
音楽で例えると、
– タッチ → 歌唱力・演奏力
– アイディア → メインメロディ
– デザイン → イントロやAメロBメロなどの構成、パーカッションなど
料理で例えると、
– タッチ → 味付け、調理技術
– アイディア → メインの食材や料理の種類
– デザイン → 盛り付け、サイドディッシュ
と言った具合ですかね?
アイディアとデザインは完全に分離した概念ではなく、ある程度重なる部分があるのが分かると思います。
また、タッチ(歌唱や味付け)が悪いと、アイディアが台無しになるのも直感的に理解できるはずです。
では、それぞれの指標について詳しく解説していきます。
タッチについて
あらためて、タッチはムーブのパフォーマンスの部分ですね。
タッチは、さらにタッチ・フロウ・フレアの3つの要素に分けられます。

タッチの中にまたタッチと言う概念があるの?ややこしくない?
カーディストは文脈によってタッチと言う言葉を違う意味で使ったりしますが、もし理解しにくいようでしたら大枠のタッチをパフォーマンスと置き換えても良いかもしれません。
タッチ
タッチは名前通りカードの触り方のことですね。肝になってくるのは「脱力感」だと思います。
新しくムーブを練習するとき、力が入りすぎてカードが曲がったり飛んでっちゃったりしたことありますよね?

↑力んでるシビル
繰り返し練習していくうちに力加減が分かってきて、必要最低限の握力でパケットを保持できるようになります。これが「脱力感」の正体です。
見てる人にはこの脱力感が思った以上に伝わります。何度も練習して、さらっとカードを扱えるようになりましょう。
また、パケットが綺麗にまとまっているかどうかもタッチの評価に含まれます。

パケットがずれてしまうと言うことは、指の置き方や力加減を最適化できてないと言うことですね。
これも何度も繰り返し練習していくうちにパケットがまとまったままカードを扱えるようになります。
ただデックのコンディション(新品で滑りすぎたり)や近年のグリップの複雑化によってある程度のばらけは許容範囲になってきている風潮はあります。
ただパケットが綺麗にまとまっていることに越したことはないですし、特にクラシックの技とかは基本的なグリップを使用しているので比較的新しいデックでも練習次第でばらけずに扱えるようになるはずです。
トバイアスはこちらの2本のソロビを開封したばっかりのデックで撮影しています。化け物ですね。
歌で言うとタッチは声の震えや音程の精度などの感覚に近いと思います。
フロウ
フロウは動きのスピードに関する要素ですね。
まず重要なこととして、
1. 動きにガタつきや引っ掛かりがないか
2. 一定以上のスピードで行えているか
この2点を抑えるだけでだいぶタッチが垢抜けてきますし、逆にどっちかがかけているだけで見ている人に違和感を与える隙を作ってしまいます。
まず一番最初に取り掛かるべきは「動きの引っ掛かりをなくす作業」ですね。
動きのガタつきをなくすと、いわゆる「スムーズ」な動きになります。
パケットをペタペタと持ち直してしまったり、パケットがカードや指に引っかかってしまうと動きにつまりが生まれてしまいます。

↑持ち直しが多いしビル
グリップ(持ち方)とトランジション(持ち替え)に注目して練習してみましょう。
新しいムーブや自分のムーブを練習する際は、まずゆっくりと動かして、適切なグリップ位置にピンポイントで指を持っていくことを意識しましょう。
指の位置を頻繁に調整してしまうと、その時間分動きが止まってしまいます。
スムーズな運指を習得したら、次はスピードを上げていく作業です。
一定以上のスピードって具体的にどれくらい?
これは感覚的な部分なんですが、「見ている人が退屈に感じない程度の速さ」が目安です。

ちょっと待って、ニコライはめっちゃゆっくりやってない?
確かにニコライはとてもゆっくりなスタイルで有名です。ただフロウの部分だけでも動きに引っ掛かりがなく、次に説明するリズムの部分が完璧なんです。
なので、「練習不足で遅い」のではなく、「意図的にそのスピードを選んでいる」と感じさせることができてるわけですね。

早ければ早いほど良いと言うわけではなく、そのムーブが一番綺麗に見えるスピードを各々が考えて再現するとそれが個人のスタイルとなります。
動きとスピードが安定してきたら最後はリズムですね。ここがフロウの本髄だと思います。
ここも個性の部分になるのですが、スピードに抑揚をつけてフロウに味付けをしていきます。
メジャーなやり方としては、カードが大きく開いているときにゆっくり目に、カードが縮こまっている時は早くする場合が多いですね。

また、似たような動きを繰り返す場合はスピードを変えて飽きさせないようにしましょう。

そして、ムーブの要所要所でテンポよくスピードに強弱をつけると、みていて心地の良いリズムが刻めるようになります。
フレア
最後はフレアですね。
聞き馴染みのない言葉だと思いますが、英単語のFlairで検索すると、才能やセンス、上品さや優雅さを表す言葉みたいですね。
要は動きのアクセントの部分になります。

それってさっき言ってたリズムとは違うの?
リズムも似たような概念なんですが、
– リズム → スピードの強弱
– フレア → 動きの強弱
と言うイメージですね。
厳密にはフレアも単語の意味を考えるとリズム部分を含んでいるのですが、説明のためにあえて分けてます。
例えばこれとこれはPhacedと言う技の同じ部分ですが、広がりが違いますよね。


同じムーブの同じ部分でも、このように動きの強弱をつけることによってムーブにメリハリが生まれます。
フレアはタッチ、フロウと比べて一番センス頼りになってしまう部分です。
フレアが無さすぎると淡白なイメージになるし、つけすぎても胃がもたれちゃいます。
タッチとフロウを十分に練習したあと、自分の好きなフレアを見つけてみてくださいね。
ムーブによっても大きなフレアが合うものや控えめのものが合うものなどがあります。
まとめ
– タッチ→ 脱力感、パケットの綺麗さ
– フロウ → スムーズさ、リズム、スピード
– フレア → 動きの強弱
54リーグのタッチコンクールで上位を目指すなら、上の3点に加え、審査員ごとのポイント解説を抑えることが大事ですね。
またマッシュアップビデオやワンミニコンなどでオリジナルムーブを発表する際もタッチが大事になってきます。
せっかく時間をかけて作った技なんだから、綺麗なパフォーマンスで披露したいですよね。
他の2要素についての記事はこちら↓
カーディストリーのムーブをどう評価する?3つの指標について(アイディア、デザイン編)
p.s. FlairとFlare
筆者のvin.はこの記事を書くまで混同してしまっていたのですが、同じフレアと発音する単語にFlareとFlairがあるんですね。

発音おんなじすぎる…
タッチにおけるフレアはFlair(センス、優美さ)なのですが、Flareには動きや見た目の広がり、カードのひらひらを表す意味もあって、結構似ている概念なので勘違いしてしまっていました。